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REXの暇つぶし場

REXの暇つぶし場

この木の下で

僕たちの思い出の場所

この町で一番高い山のふもとにある獣道

そこを抜けると小さな2本の木がある

その木の下が僕たちの場所

僕がここにいると決まって君は遅れて来る

僕はいつものように笑って迎えてやる

ここにはたくさんの思い出達が眠っている

二人が好きだった本

一緒に拾った綺麗な石

しょうもないおもちゃや

2人で作った粘土工作

そして・・・・・

10年後の2人に宛てた手紙

あの手紙を書いてから10年間

きっと一緒にいれると信じていた

しかしその手紙を書いた1年後のことだった

その日は初めて君が僕を迎えてくれた

「今日は私が早かったね」

そう言って笑って君は僕に言った

「転校するんだ」

そしてこの木の下で一緒に手紙を読むことを誓った

中1の夏、君は転校していった

それから10年間

僕の夢は君と手紙を読むことだった

もう大学も卒業するこの年君と別れてから

久しく行ってなかったあの場所へ向かった

大学もさぼって朝からいた

君がいつ来てもいつものように笑って迎えてやるためだ

町はだいぶ変わったが

このあたりは全く変わらない

今じゃ小さくなってしまった獣道を抜けると

そこには変わらぬあの場所が

木陰に腰掛けて君を待つ

来ると信じて待っていたが

昼を過ぎたあたりこないのではないかとだんだん不安になってくる

日が傾きかけた頃

僕の目からは涙がこぼれる

僕の10年はなんだったんだ・・・

そうだよな・・・来るわけがない・・・僕が馬鹿だったんだ

帰る気力もなく僕はただ泣き続けた

ふと遠くを見ると

夕日の中をかける少女が一人

目的地はこの町で一番高い山

笑って迎えることはできなかったが

その日、僕の夢が叶った日であった


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